この研究の一部は科研費のサポートを受けています。
(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K15984/)
当科では1981年6月より2014年12月までに4379例の腎生検を行ってきました。
この豊富な腎組織症例を用いた後ろ向きコホート研究をいくつか行っております。
現在、3つの研究が進行中で
①糖尿病性腎症での腎組織内小血管病変と大血管病である心血管イベントとの関連の検討、
②微小変化型ネフローゼ症候群に対する低用量ステロイド療法の効果、
③再発を認めたIgA腎症の腎予後や腎予後関連因子の検討を行っています。
特に注目すべきは、この腎生検コホートは400例以上もの糖尿病性腎症を含んでおり、単一施設としては最大級の症例数となります。
このコホートにおける糖尿病性腎症の予備解析では、腎臓に認める病変の違いによって身体に及ぼす影響が異なることが分かりました。
腎臓内の動脈の硝子様変化は心血管事故や生命予後に影響を与えていましたが、糸球体病変と尿細管病変は腎不全の進行に強く関連していました(図)。
近年、新たな透析導入患者の2人に1人は糖尿病性腎症であり、糖尿病性腎症の新たな治療法の開発は喫緊の問題です。
当科の豊富な糖尿病性腎症の組織情報から得られる知見は非常に貴重であると考えています。
この研究は科研費のサポートを受けています。
(https://research-er.jp/projects/view/1020961)
認知機能障害はADLやQOLに影響を与えるだけでなく、高齢化が進む現代においてその治療にかかる医療費の増大は大きな社会問題となりつつあります。
慢性腎臓病(CKD)のステージの進行に伴い認知機能障害の割合は増加し、透析患者においては健常高齢者と比較して2倍以上の頻度で認知機能障害が認められることが報告されています。
CKD患者における認知機能障害の原因は、血管性因子(高血圧、脳血管障害、脂質異常症、糖尿病等)のみならず、非血管性因子(貧血、副甲状腺機能異常、うつ病、薬剤、酸化ストレス)など多因子の関与が推定されています。
本研究では65歳以上のCKD患者(目標症例数300例)を対象として、認知機能障害の危険因子、バイオマーカー、脳MRI、認知機能に関する経時的なデータを前向きに収集していきます。
同定した複数の危険因子やバイオマーカー、MRIから得られるイメージデータを組み合わせて新しい認知機能低下予測リスクスコアを開発することを目的としています(図)。
この新しいリスクスコアを用いることによって、より早期の段階からスクリーニングが可能となり、効果的な予防法や治療法の開発が期待されます。
急性腎障害(AKI)を起こした患者では、長期の心血管系イベントや死亡率が高いことが知られています。
術後の約1/3の症例にAKIはおこります。心臓手術を受けた患者を対象にした術後AKIの生命予後やリスク因子を調べた研究は多数の報告がありますが、非心臓手術を受けた患者を対象とした研究は小規模のものしかありません。
この研究では全身麻酔下で非心臓手術を受けた患者(予定症例数:10000例)を対象として、術後AKIが生命予後に与える影響や術後AKIの予測因子を研究しています。
中間解析では、非心臓手術を受けた患者においても、AKIを起こした患者では死亡率が高いことがわかりました(図)。
また、図に示すリスクスコアを使った術後AKIの予測モデルを作成しました(AUC 0.737; 95%信頼区間 0.709-0.764)。
この結果をもとに最終的には術後AKIの予防や介入研究へとつなげていくことが目標です。
慢性透析患者の全人口に占める割合は年々増加しています。
しかし、透析導入後の生命予後は健常人と比較して半分程度となることが分かっています。
透析療法には血液透析と腹膜透析とがあり、それぞれの生命予後の比較をした研究は海外で行われていますが一定した見解は得られていません。
わが国において透析療法を受けている患者の生命予後は海外と比較して非常に良好であることは分かっていますが、血液透析と腹膜透析の予後を比較した報告は余りありません。
当科で透析導入された症例を対象に、透析導入後の予後調査を行い、腹膜透析と血液透析の比較を検討しています。
この研究において血液透析と腹膜透析患者での生命予後や心血管病の合併率の比較をするのみならず、生命予後や心血管病の合併に関わる透析関連の因子を同定していく予定です。
①腎生検組織を用いたコホート研究
l 糖尿病性腎症での腎組織内小血管病変と大血管病である心血管イベントとの関連の検討
l 再発を認めたIgA腎症の腎予後や腎予後関連因子の検討
の対象者のプライバシーに関することは、第三者に漏れないように十分配慮されています。
この臨床研究での検討結果を学術雑誌や学会で発表させていただくこともありますが、個人情報が公開されることはありません。
これらの観察研究は、過去のカルテより情報を抽出する研究であるため直接対象患者さまからの同意をもらっていませんが、これらの観察研究について質問が、参加されたくない患者さまはいつでも下記連絡先にご連絡ください。参加されない場合でもあなたが不利益を受けることは一切ありません。
・研究機関の名称及び研究責任者の氏名
奈良県立医科大学
腎臓内科学
鮫島謙一、鶴屋和彦
連絡先(電話番号):0744-22-3051 (内線3441)