奈良県立医科大学 附属病院 腎臓内科学

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研修プログラム

腎臓内科医:高い専門性を持った内科医としてのgeneralist

奈良県立医科大学の腎臓内科学は、①腎臓内科としての高度な専門性、②全身管理ができるgeneralistとしての側面、③実臨床から生まれるresearch questionを大切にした臨床研究および基礎研究、の3つの柱を軸に成長していくことを目指しています。腎臓内科を専門として選ぶメリットは以下のことが挙げられます。慢性腎臓病は、患者数が全国で1330万人(成人の8人に1人)と推算される国民病の一つであり、腎臓と透析の専門医には非常に多くのニーズがあります。また、腎臓病の全てのステージの診療にあたることにより必然的にgeneralistの側面を持ち合わせた内科医となります。研究に関しても、generalistとしての広い視野をもって臨床研究および基礎研究に臨むことができます。

①腎臓内科としての高度な専門性
1.糸球体腎炎・ネフローゼ症候群の診断治療、腎生検の施行・診断

腎生検・腎組織カンファレンス・腎組織の検体処理

当科では、大学病院および関連施設で、年間100~120例の腎生検を行っています。病理診断を病理医に任せていることが多い他の疾患と異なり、腎臓内科では組織処理から組織診断に至るまで全て自分たちで行っているため、より専門性の高い知識を得ることができ、また自身による組織診断のもと治療方針を決めるため、より直接的に治療方針決定に携わることができます。大学病院では毎週腎生検病理カンファレンスを行い、組織診断をディスカッションして治療方針を決定しています。

2.水・電解質異常、酸塩基平衡異常の治療

人口呼吸器の調節・輸血メニューの一例

全身状態の悪い状況で多く認められる水・電解質異常や酸塩基平衡異常に対して、腎臓内科医は専門性をもってその評価と治療方針の決定が行えます。ICUの現場で必須である体液量、循環動態、呼吸状態、血液ガスの評価を行ったうえで、適切な体液管理(輸液)と酸塩基平衡の調節(輸液および呼吸器の設定)を行っています。腎臓内科ではこれらの専門性の高い知識を習得することができます。

3.急性腎障害・慢性腎臓病の治療

血液透析・腹膜透析

急性腎障害(AKI)は腎炎などの腎臓自体の問題のみならず、全身の血行動態(sepsisや心不全)、抗がん剤や造影剤、腎後性の腎不全など様々な原因で起こります。腎障害の原因は多岐にわたるため、原因検索および治療方針の決定には専門医の知識が必要とされます。 また、慢性腎臓病患者は全国で1330万人いると推算され、透析患者数は32万人を超え、現在も年々増加しています。このため、腎専門医や透析専門医のニーズは非常に高く、慢性腎臓病の進展抑制と透析患者数の増加に歯止めをかけることは当科の責務です。 末期腎不全においては血液透析、腹膜透析、腎移植と3つの選択肢があり、患者の状況に応じた最適な腎代替療法の選択が必要です。当科では“包括的腎代替療法”の理念をもとに、患者と医師が共同で治療の意思決定を行う shared decision making(SDM)を実践し、腎代替療法の選択を行っています。また、透析患者の治療において、多くの合併症(脳卒中、冠動脈疾患、末梢動脈疾患などの心血管病、骨ミネラル代謝異常、貧血、感染症、透析アミロイド症など)と遭遇します。これらの合併症は直接、腎臓病に関わるものではありませんが、当科では腎臓病患者の全身管理の一環として合併症に対しても専門性をもって治療しています。

②腎臓内科医のgeneralistとしての一面

CCUにて昇圧剤投与下でのCHDF(持続的濾過透析)、PMX(エンドトキシン吸着療法)、人口呼吸器管理中

腎機能障害は糖尿病や高血圧のみならず、膠原病や血液疾患など様々な疾患の一症状として現れます。そのために、多様な疾患に対する十分な知識が必要とされ、それらの疾患の治療にも携わります。 さらには、腎臓は心臓(心腎連関)、肺(肺腎連関)、肝臓(肝腎症候群)、腸管(腸腎連関)などの生命維持に大切な多くの臓器と関連しているために、腎臓内科医は、腎臓だけを診るのではなく他臓器を含めて全身状態を把握しなければなりません。当科で研修すれば、自ずとその能力を得ることができます。また、ICU管理が必要な多臓器不全の状態で、最初に異常が現れやすいのも腎臓です。このため全身管理が必要な状況に対応することが多く、必然的にICUで使用する専門的な機器類である人工呼吸器、CHDF(持続的血液濾過透析)、血漿交換、血液吸着療法などを使いこなし、中心静脈ラインを使用した急性期の循環動態の管理にも自信を持てるようになります。つまり、ER doctorとしての側面を持ち合わせた内科医になることができます。 当科は循環器内科(第1内科)より分岐してできたこともあり、入院・外来での診療を現在も循環器内科医と一緒に診療を行っています。心臓と腎臓は心腎連関で言われるように循環動態を調節する臓器として特に深いかかわりを持っています。当科の医師は、循環器内科の医師とともにお互いの知識を共有しながらさらなるgeneralistを目指しています。 また、透析患者を含めたすべてのステージの慢性腎臓病の管理を行うためには、心血管合併症、感染症、悪性腫瘍を含めた様々な疾患を対応することが必要となります。腎臓内科医は慢性腎臓病患者を腎不全以外の死因で看取るため、腎臓疾患だけではなく様々な他臓器疾患への対応ができるようになります。

③実臨床から生まれるresearch questionを大切にした臨床研究および基礎研究

統計ソフトを用いたデータの解析・基礎実験

研究には臨床研究と基礎研究があります。当科では全ての入局者にリサーチマインドをもって日々の臨床を行う医師になれるように目指すことを指導しています。また、臨床力に自信を持った状態で(ある程度医師として一人前になって)自分の臨床的疑問を解決する研究スタイルを大切にしています。これは、研究を行うにあたり、臨床知識を背景として治療に直結した研究が行われることを目的としています。 現在、当科で進行中の詳しい研究内容については研究内容をご覧ください。

奈良県立医科大学 腎臓内科医としてのキャリアパス

1. 入局後3年間(内科専門研修期間)
腎臓内科入局の若手先輩方

Generalistとしての臨床力を積むうえで、研修医が終わった後の最初の3年間はとても大切な時期です。また、効率よく内科専門研修の症例を取得するうえで、さらには臨床研究の教育面から、入局後の最初の1~2年は人材のそろった大学病院で、知識を持った上級医から学ぶ必要があると考えています。この期間に内科専門研修に必要な大学病院での勤務ならではの珍しい症例を多く経験できます。また、当科では現在4つの関連病院があり、奈良県総合医療センター(540床)、奈良県西和医療センター(300床)、市立奈良病院(350床)、大阪府済生会吹田病院(500床)は何れも地域の中核をなす総合病院です。大学病院での研修後に、より実務的な臨床力を身につけるための環境が用意されています。

2. 4年目~専門医の取得
アメリカ腎臓学会で発表(2017年:ニューオリンズにて)

関連病院や大学病院にて腎臓内科、透析専門医を目指し臨床力を積みながら、個人の希望や特性に合わせて研究ができる環境があります。研究には基礎研究と臨床研究があります。基礎研究を希望する場合は大学病院で大学院生として研究してもらいます。臨床研究に関しては大学病院のみならず関連病院で勤務しながら、日々の臨床から生まれる疑問を解決していく研究スタイルをとることもでき、学位(医学博士)を取得することもできます。 研究の成果を海外の学会で発表するのも医師として充実感を感じることができる瞬間です。

3. 将来
基礎研究で留学中のラボメンバー(Cedars-Sinai Medical Center ロサンゼルス)・留学席の自宅でのバーベキュー

学位の取得後は個人の希望に添って、様々な道を選ぶことができます。大学病院あるいは関連病院で臨床を行いながら国内で研究を継続することもできるし、海外留学をしてさらに見識を広げることもできます。留学に関しては、2018年よりアメリカで臨床留学をしている先輩医師がいますし、もちろん基礎研究での海外留学の道もあります。 ある年齢からは開業を考える方もいるでしょうし、女性医師では出産や育児を行いながら勤務する方もいると思います。この時にgeneralistとして広い知識と高い専門性が武器になります。例えば、出産後や育児中の勤務などでは日勤帯での週3回程度の勤務などが選択肢として選べるのも、透析専門医としての高い専門性があるからです。 奈良県立医科大学の腎臓内科医の一員として一緒にキャリアを積んでいきませんか? 信頼しあう同志がここに集い、充実した生活を共有しましょう。

文責 江里口 雅裕

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